「かいごの道」      

介護のこと。現役の介護支援専門員(ケアマネージャ)によるブログ。介護支援専門員の目から見た、社会情勢など。介護に関する相談は何でも受け付け予定!

【介護保険崩壊】介護保険の無駄使いのお話

 実は年金よりも介護保険のほうがアブナイ!!

 あなたは考えた事がありますか?このエントリを最後まで読むと、介護保険ヤバイ!と感じるかも!

 

 年金制度崩壊については、散々、取りざたされている。わたしたちがお爺ちゃんお婆ちゃんになったころ、年金は幾らもらえるのだろう?と気にねるけど、やっぱり今よりずっと少ない額しか貰えないのは、周知の通りだとおもう。

 さて、来るべき高齢化社会を見据えて2000年に創設された「介護保険制度」も、創設以来ずっと存続が危ぶまれている。2015年の介護保険法改正は、現在の危機的状況がすごく浮き彫りになった。

特別養護老人ホームは原則要介護3以上!!」

「要支援の人は介護保険から締め出します!→市町村にお任せするから、あととりあえずご自由によろしく!」

「今まで色々助成してた人も、打ち切る人増やします。お金なくなったから。」

介護保険一律一割負担もやめます!」

「納めてもらう介護保険料もあげていきます!」 

 

 やむなし、と思えるものもあるけど、すごく締め付けてきた。この理由にはどうも制度設計の甘さがあるようにおもえる。年金もちょっとしか貰えない、介護保険制度も制限があったり高額だったりで使えない。わたしたちの世代は、本当に難民になるのではないかと心配にもなる。

 介護保険の制度設計の甘さについては、真剣に介護現場にいるケアマネージャー等なら、みな知っている。すごくわかりやすいものをあげる。

介護保険のからくり

特定福祉用具販売という制度があり、一定の基準を通過し認可を受けた福祉用具を介護保険を通じ一割負担で購入することができる。

どんなサービスがあるの? - 特定福祉用具販売 | 公表されている介護サービスについて | 介護事業所検索「介護サービス情報公表システム」

福祉用具販売の指定を受けた事業者が、入浴や排泄に用いる、貸与になじまない福祉用具を販売します。福祉用具を利用することで日常生活上の便宜を図り、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。

 

この介護保険の仕組みを通すと、

福祉用具のご紹介 | 介護用品サービス | 株式会社トーカイ

http://www.tokai-corp.com/silver/instrument/images/22_17964_02.jpg

 

指定を受けた業者さんから、14,175円福祉用具を一割負担の1,418円で買える!いい制度に見える。9割は保険財源から、業者に支払われる。

 

ところが、指定を受けていない業者さんは、約4,000円でほぼ同じ商品を売っている。アマゾン、ホームセンター、イオンなどで買える。

 

山善(YAMAZEN) コンフォートシャワーチェア

山善(YAMAZEN) コンフォートシャワーチェア

 

 

1,418円4,000円、どちらが安いのか?

 

もうひとつ例をあげる。

介護用ベット(特殊寝台)というものがある。モーターが付いてて、背中とか足の部分が簡単に上げ下げ出来るベットのことだ。

 

介護保険関係なく、普通に購入すると約10万円だ。

さて、この「特殊寝台」という商品は、一割負担で月に1,000円程度で介護事業者からレンタルを受けることができる。こちらも、介護保険財源から更に残りの9割分の9,000円が業者に入る。しかし、実際にはこのベットには毎月10,000円の料金が発生している。一年間では、12万円の高級ベットなのだ。

 

一方、わたしたちに馴染みのあるアイリスオーヤマさんは、約20,000円でリクライニングベットを売っている!二ヶ月以上使うなら、こちらの方が、圧倒的にコストパフォーマンスがいい。実費で払うならそういった感覚が働くだろう。 

 けど、一ヶ月「実質1,000円!」なら、介護保険でレンタルしたくなるのも理解できる。一年間のレンタル料は実質12,000円にみえるのだ。

そして、一番あくどい業者は、「一割分もいらないよ!無料だよ!」とタダで貸して、9割分を保険財源からかっさらう。ここまで来ると摘発の対象になる。

 

 機能性や安全性の面で、ものすごく良い介護保険商品もある。そこには日本の企業努力があり、すばらしい発想もある。その人にとって、代えがたい商品もあるし、市販のものでは対応しきれないケースもある。

 しかし、問題は「必要性を検討し」「介護給付全体を管理する役割」だった「ケアマネージャー」が「企業の奴隷」となり、結果として、「ケアマネージャー・施設・業者」が一体的に運営されている現状である。なので、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の多くは、介護2になると必要不必要を問わず、ケアマネージャーを通じてレンタルを勧めてくる。

 

企業の奴隷のケアマネージャーは、以下のように話をする。

「介護2になったら、ベットを借りられます」

「もし、介護度が高くなっても安心、マットレスも選んで借りられます!」

「買うと、処分が大変」

「原則介護2以上なら(実質)1,000円で借りられます。良いですね、安いですね。」

 

 そうして、みな、介護ベットを利用する。そこに必要性などない。モーター数が多いベットは料金も高いが、実際は必要性がないので、そのモーターの使い方もしらないままの人もたくさんいる。まさに無駄なお金が注がれている。そして、これは介護ベットだけに限った話ではない、ヘルパーやデイサービスも過剰に提供されている。実費なら払わないけど、実質なら安い!という消費者心理につけこんだ企業が介護保険とわたしたちの未来を喰っている。 

 

ここらへんが、介護保険の最大の設計ミスだとおもう。

 

参考

kaigoist.hatenablog.com

 

まとめ

 実質安いです!と、ケイタイ会社顔負けの商法で、謎のサービスを付加し、同等のものよりも何倍も高額な値段がついているのだということ。勿論会社のために、ひいては自分のお給料のために、必死でそれを売ろうとしている涙ぐましいケアマネージャーたちがいること。そして、これが国民皆保険を通じて納められた保険料に基づいて運営されていること。そして、当然保険財源が減っているので、年々支払う保険料が増えていくということ。

こうして、介護保険の財源はあたりまえだけど15年間でどんどん無くなった。この流れを止めないと、介護保険制度は崩壊していくだけなのです。続く。