「かいごの道」      

介護のこと。現役の介護支援専門員(ケアマネージャ)によるブログ。介護支援専門員の目から見た、社会情勢など。介護に関する相談は何でも受け付け予定!

【介護ウラ話】生活保護と介護保険のお話

介護の商売をしていて、生活保護の人が羨ましくなることがある。生活保護の人は医療費もゼロ円だが、介護費もゼロ円になる。

介護度上限の許す限り、毎日ヘルパーを利用しようが、車椅子やベットを利用しようが、まったく自己負担金が発生しない。一番低い要支援1の人でさえ、月に5万円分を介護関係に使って、ゼロ円負担でいい。

医療費だけでなく、介護費もタダ。

年寄りってのは、一部例外を除いて、大体興味の範囲が限定されてくる。大方の年寄りの興味は、健康だったりする。そこに大きく関わるもんがタダ。これは幸福度が高くなるおおきなポイントだ。

 

生活保護高齢者と生活保護でない高齢者のケース

 

Mさん

生活保護でない。持ち家あり、月8万。一人暮らし。

生活保護は家を売ってからといわれ、介護が必要な状態であるが毎月介護に使えるお金もあまりない。週2回ヘルパー。

がんをわずらっているが、治療費もかぎりがある。早く死にたい。ヘルパー来ない日は家で一人きり。

 

Iさん

生活保護。毎晩飲み歩くことはできるけれど、掃除とかできないというか、したくもないし、あまりしたこともない。週に4回ヘルパー。しかもタダ。

保護費があまったら、ヘルパーにジュースとか買ってあげる。やさしいおじさんの印象。

 

Yさん

生活保護でない。老老介護。二人暮らし。足腰弱いから介護ベットをレンタルしたいけれど、月に1500円程度の自己負担金となる。年間18000円。まだ我慢しようとおもってる。

 

Jさん

生活保護。高齢だから腰がいたい。あたりまえに腰が痛い。

ベットがタダで借りられると聞いて、借りた。マットレスも選べた。けっこういいマットレス。もちろんタダ。

 

Hさん

生活保護でない。年金があまりないから、物を大切にしている。

洋服も自分でリフォームした。

 

 Kさん

生活保護

物を管理することができないので、洋服などはワンシーズンでダメになって捨てる。

大切にする気持ちがないからか、電化製品をすぐ壊す。電子レンジの扉がなぜかよく壊れるのが悩み。

 

Yさん

生活保護でない。年金暮らし。年金そこそこあるが、年寄り故に、体調を崩しやすく、医療費がかかるので、お金は無駄に使えない。

 

Oさん

生活保護。お金はそこそこ使える。

臨時で必要になるお金は医療費くらいだし、医療費はタダだから、いざというときも安心。医療費タダで病院から処方された薬やシップを、友人たちにあげると、とても喜ばれる。たまにお金を使いすぎて、本当に生活できなくなるくらい困窮するが、そのときは体調を崩して入院生活を送ることにしている。タダだから。

 

Fさん

生活保護でない。シャワーチェアとかよく耳にするけれど、お金を払ってまで買うつもりもない。イオンで買ったお風呂の椅子をつかっている。イオンはやすいので感謝している。

 

Kさん

生活保護

シャワーチェア時価一万円。介護保険を使い購入。生活保護なので、負担金はゼロ円。でもなんか大きくて使いにくいから、友達にあげた。

 

Dさん

生活保護でない。妻は死んで一人暮らし。

大家族で育ち、子供・孫もいるが、みな遠方。一人で過ごすのはすきでない。家事もしたことないし、妻が死んでからは大変。

近所のデイサービスに毎日行きたいが、月2万円と昼食代程度負担しないといけない。なので、週3回にしかいけない。

 

 Eさん

生活保護。一人暮らし。

毎日デイサービスで遊んでいる。たのしい。自己負担は昼食代のみ。

気付いたら、なんか友達も増えた。彼女もできた。

 

 

と、まあおおげさでなく、こういう風になっている。

健康と安心、それが多くの価値をもつ年寄りの世界では、介護保険医療保険で、それが揃う。

生活保護の場合、要介護1の人でも上限16692単位×12ヶ月で年間約200万円、必要に応じてだが、その中で自由に介護関係に使えてしまう。

一方生活保護でない場合は、おなじ条件で年間自己負担20万円となる。なかなか、使えるわけが無い。

医療費にいたっては、際限なく使える。

 

考え方はいろいろあるだろうが、正直うらやましい。お金のことで悩むことのない老後を送れるなら送ったほうがいいしだから、この制度が今まで以上に機能してほしいと思う。贅沢をいうなら、みんながそうなればいい。

 

生活保護制度と年金制度とは、一体化して論じろ、とかいう話もでている。あたりまえだ。だって、現場ではこんなに逆転現象がおこってる。

医療、介護が大きく関わってくる年寄りの生活保護制度と、若者の生活保護制度は、一体的に論じることができない。そもそも年寄りは自立なんかめざす意味もない。

だから、いったん切り離して、年寄りに限っては、もう希望者全員生活保護にすればいい。希望している人は案外おおい。それが普通になったら、これこそが福祉な感じがする。

だから、財産はぜんぶ取り上げるかわりに、一生生活保護費を支給すればいい。死んだあとも、お墓までいれてくれるから、心配ない。孤独死もいくらか減るかもしれない。年金とかそういったもんで切り売りしてた安心とやらを担保にして、生活保護制度をうりだせば、みんな喜んで買うだろう。

そうしたら、国庫もだいぶ潤う。これはいい事尽くめ。若い世代も老後の最低限の安心を得られるとおもえば、いろんなチャレンジもできるだろう。国もまだ伸びていく。

 

生活保護になんか否定的な意見がおおくきこえるのは、単純にうらやましいからだ。

それは、わたしたちの必死に稼いでいるお金と彼らのもらうお金が等価にみえて等価でないところからきている。お金の定義そのものもちがう。物の価値もちがう。

 

生活保護制度自体にいろいろな意見はあるけれど、年寄りだけを生活保護にするのは、本当に幸福度があがるいい施策になるとおもう今日この頃。

この町の年寄りは生活保護であふれているけれど、それでいい気もした。