【介護現場】暴力団員の高齢化と介護のお話
介護保険の商売をしていると、本当に色々な人と出会う。老いや死が、誰にでも平等にやってくるからだ。そして、それらの圧倒的な力の前には、誰でもが、平等だ。
わたしが事業を行っている某地方都市は、公営ギャンブル場がある。そういうのがあると、自ずとそういう人たちが集まってくる。だから、それをシノギにする商売の人たちもたくさんいる。
冒頭にも書いたとおり、老いは平等だ。超高齢化社会日本がすぐそこまで来ている。
一般に反社会勢力といわれている暴力団のみなさんも、軒並み高齢化してきた。平成14年 警察白書で、すでに「暴力団の高齢化」が指摘されている。
年金や任意保険に加入していないケースが多く、高齢になり、食い扶持がなくなると、不正受給ではなく生活保護に頼らざるを得なくなる。暴力団員は、生活保護を受けられないかというと、全くそうではない。審査や経歴調べには限界があるからだ。
そして、一度生活保護受給者になると、今度は介護扶助がある。つまり介護保険のサービスについては自己負担がない。ヘルパーさんを何度利用しようが、すべて自治体の負担、つまり個人的には無料と解釈される。医療費も同様だ。
そうしたら、使わない訳が無い。これは、反社会勢力うんぬんでなく、誰だってそう考るだろう。抵抗が無く、お金がなければ、生活保護のほうが格段に安心な老後をおくることができてしまう。わたしだって、ただなら欲しくなるものがある。困っていたらなおさら欲しい。
そして加えて、特殊な世界ゆえに、交流関係も特殊であり、老後に面倒をみてくれる人にも限りがある。結果として、暴力団関係者の介護保険利用も増加している。ただし、数字としてはなかなか出てこない。
実際に、こういうケースに遭遇をすると、こんな感じになる。
ヤクザの方の場合、老後や老人ホームはどんな感じですか。 - Yahoo!知恵袋
本人や家族から昔話を聞かないと元ヤクザって分からない場合が多いですね。風呂介助に入ったりすると立派な彫り物があり分かることもありますけどねw風呂は本人の希望で最後に入るって言う人もいます。
ヘルパーさんは色々な人を相手にしますので、勿論やくざさんだからといって差別はしません。逆に特別扱いもしてあげません。
気性が荒いのは、デフォルトの設定であるし、故に色々なトラブルが多いケースもある。だが、解決できないほどの厄介なケースは暴力団だろうが暴力団でなかろうが、同じ程度にあるのだ。
むしろ、個人的には、暴力団でないほうが厄介すぎるトラブルに発展する気がする。
別のケース。
訪問入浴利用者、元ヤクザAさんの話し 後編 – 介護職員ナックルのスロット日記
Aさん:「俺の人生はもう終わりだ。こんな苦しいなら、チャカの一つでも置いておけば楽に行けたのに。いいか兄ちゃんよく聞け、今からの人生絶対無駄に生きるな。俺は世間から見たらろくでもない人間かも知れないが精一杯生きた。
そう思って死ねることだけが、生きててよかったと思える」人の人生には、その人にしかないストーリーがあります。これは、自分自身、悔いのないように生きた人には素晴らしいものになるのではないでしょうか?
個人的におもしろいのは、介護保険を利用するとそれを契機にあたらしい交流関係が生まれることだ。そして、その関係者たちは、福祉に従事するものであり、過去や経歴で差別することのない理念を持っている。そして、差別の心がないものに、急に危害を加えるほどの人は、あまりいない。そこまで、極端なのは、娑婆にはいないからだ。塀の中にいる。
だから、介護従事者は、差別無く、丁寧にというか普通に対応する。その人が過去、どんなことをしてきたかに関わらず。銭湯や温泉は、刺青禁止だが、老人ホームでは、大浴場に入ることができる。やっぱり不思議だ。
これが、介護給付費の無駄使いではないかと言われたら、悩んでしまうが、こういった使い方が赦される社会であってほしいとも思うし、個人的にはそのスタンスでいたい。
それほどまでに、生と死は、平等なのだと思う。そこから、考えるべきなのだ。