「かいごの道」      

介護のこと。現役の介護支援専門員(ケアマネージャ)によるブログ。介護支援専門員の目から見た、社会情勢など。介護に関する相談は何でも受け付け予定!

【介護ウラ話】奴隷化するケアマネージャー

ケアマネージャーという言葉を知っていますか。あなたの知っているケアマネはどんなものですか?

いま、ケアマネージャー(略してケアマネ)が、奴隷化している現実があります。介護保険制度の要はこのケアマネージャーといわれる職種で、ケアマネージャーがケアプランを作成し、それに沿ってヘルパーやデイサービスなどの各サービスが行われます。

そして、いま、それほどの悪意を持たずに、それゆえ気づかれずに、介護保険制度をめちゃめちゃにしていっているのが、実はこの奴隷型ケアマネージャーなのです。

 

高齢者施設、お手盛り介護 「歌ばかり歌わされて…」:朝日新聞デジタル

「歌ばかり歌わされて。嫌で嫌で」。東京都中野区有料老人ホームにいた男性(92)は昨夏まで、夕方になると疲れ果てていた。童謡を歌ったり風船を突きあうゲームをしたりするデイサービスが、昼食や入浴を挟んで朝9時から午後4時半まで続いたからだ。 昨年7月の利用明細には、ホームが運営するデイサービスが1日7~9時間、週6日びっしり。月に約3万3千円が本人に請求された。介護保険は本人が1割、保険が9割を負担する。「要介護4」の男性が使える限度額約33万円いっぱいがつき、ホーム側に介護報酬が支払われた。

これ、ちょっと話題になりましたが、毎日こんな生活送らされる現実は、あなたの思ってるよりも多く、あるんですよ。

老人ホームってイメージは確かに、ここ10年でがらっと変わりました。どこも割りときれいです。汚いとこ、くさいとこに、監禁されている時代は終わりました。

現在は、デイサービス等などで「強制労働の毎日」です。悲しいことにこれは主流になりつつある現実です。あとは、ヘルパーの押し売り。特に施設では、用事もないのに、厚意でしょうか、様子を見に来てくれます。一日何回も。外から見ると、毎日それなりに楽しそうで、安心・・・かも、知れません。現実を知ると、寒々しい恐ろしさを感じます。有料老人ホームなどでは、専属のケアマネが、露骨に自社利益を出すケアプランを作ることが、すでに一般的になっています。

往々にして、家族や友人との交流が狭くなってくる高齢者にとっては、お金を稼ぐ道具としてですが、丁寧に生かして貰えるだけ良しとしていいのでしょうか。それだとしたら、とっても幸せなのかもしれませんね。よかったね。

いいんですかね。それで。いいんですかね。死んだら、売り上げが減ったね、と言われる人生。

 

 

(報われぬ国)お手盛り・ひもつき…介護実態は 反響編:朝日新聞デジタル

 

デイサービスや訪問介護特別養護老人ホームなどのサービス利用計画(ケアプラン)はケアマネジャーがつくる。事業所や施設の意向を酌み、必要以上にサービスをつける「ひもつきケアマネ」の例もある。

 

 中国地方に住む70代女性は、数年前に父親が脳梗塞(こうそく)で倒れ、翌年に亡くなるまで自宅で訪問介護リハビリを利用した。驚いたのは、月25万円近くになる自己負担の請求額だった。父親は最も重い「要介護5」だったが、介護保険の利用限度額は約35万円で自己負担は1割の約3万5千円で済むはずだ。「ケアマネから事前にプランの内容や限度額の説明を受けなかった」と女性は主張する。

プランをつくったのは、リハビリを担当する病院グループのケアマネだった。「ケアマネの裁量は大きく、事業所と組めば何でもできる。介護保険を運営する市町村はもっとチェックするべきだ」と訴える

 

これは、ちょっと極端すぎる例です。現実には、奴隷ケアマネなんかは、限度額いっぱいで調整をします。利用者の自己負担は、ある程度に抑えます。

利用者からお金を貰うより、国から盗るんです。9割は保険財源の負担ですから、残り1割のちょこっとのお金なんか、あまり、目もくれなくていいんです。

これは、いま、日本中で起こっている、まだあなたの知らない現実です。

介護保険事業者は、国からお金を貰うことを第一に考えています。利用者の1割負担分は、万が一数ヶ月間、回収できなくても、サービスは継続します。国が9割くれるから!

 

(報われぬ国)ケアマネ、施設の縛り 意に沿わねばクビ:朝日新聞デジタル

東京都内で医療法人グループが運営する居宅介護支援事業所にいたケアマネは昨年春、担当していた70代の女性が自宅で転んで骨折し、歩けなくなった。

 一人暮らしは無理だと考えて施設を探し始めた矢先、グループが運営するデイサービス事業所の責任者が声をかけてきた。「施設へ入れず、デイサービスに毎日通わせたらどうか」。同じグループの訪問介護事業所の責任者も「まだ施設に行かせなくても、今まで通り訪問介護を使えばいい」と言ってきた。

 

 それでも女性の状態を考えて小規模介護施設に入れると、訪問介護事業所の責任者は「あなたは全然わかってない」と責めた。

よくわかります。生かさず、殺さずのラインをしっかり行くんですね。よくあるケースです。デイサービスの責任者は実に立派な会社員です。

毎日デイサービスに通ってもらうと、その一人を抱え込むだけで、毎月、約20万~30万ほどの売り上げがでるんです。そのうち自己負担は1割。それで毎日、朝から晩まで、介護してくれるなら、利用者もそれなりに安心でしょう。

まともな営利企業のそれなりに優秀な社員なら、施設などに入れて、自社から「手放す」判断はしません。

でも9割は国の負担です。必要性とかは、ちゃんと考えないといけません。そうしないと、制度がなくなります。安心とか意味不明なものを盾に、ケアマネは自社の儲けになること第一のプランを作らされる傾向があります。

今後、この傾向が強まっていくのは、間違いないでしょう。これは、介護保険のケアマネのあり方の、残酷な構造が原因です。

 

ケアマネのほとんどが、ケアマネの事業単体でなく、併設の事業所を構えています。なぜならば、現行の介護保険法では、どうやっても、ケアマネ単体では、ある程度の収益以上は見込めないからです。ケアマネだけでは、一生懸命やっても、儲けはあまりでない仕組みです。

母体である会社法人が、訪問介護(ヘルパー)や通所介護(デイサービス)も作り、連携してサービスを行うのが常です。訪問介護通所介護は、やればやるだけ、儲けがでやすい構造です。

そして「連携」という言葉を隠れ蓑に、同法人内のサービスへ、顧客を回すのです。恐ろしいことにこれが、一般的になってしまいました。

 

ケアマネージャーは公的な保険を扱うにも関わらず、会社員であるという側面を持っています。つまり、半分は自社の利益を考えなければならないのです。だから当然、自社のサービスを勧める営業マンとしての顔を持つことになるのです。

 

(報われぬ国)ケアマネ、施設の縛り 意に沿わねばクビ:朝日新聞デジタル

 

 06年には、ケアマネが施設などの言いなりになって介護報酬をふくらませるのを防ぐねらいで、特定の事業所のサービスを9割以上つけると介護報酬を減らすよう基準を改めた。しかし、介護の現場では「9割までは特定の事業所につけてもいい」と受けとめられ、逆に「ひもつき容認」という批判もある。

 で、厚生労働省の対応がこれ。これは、9割までならいいですよ、報酬を減らす罰則がないですよ。と言っていると取られても仕方の無い、どうにも無駄な基準です。しかも、この9割を計算するために、またややこしい作業がもれなくついてくるという素敵な施策です。机上の空論すぎて、何もいえなくなります。

実に立派なお役所仕事!

 

デイサービスだってヘルパーの事務所だって、いまやコンビ二と同じくらいの数がありますが、実際、自分の目で見て回れるのなんて、たかが知れています。特に高齢者にはそんなモチベーションなかなかなありません。ケアマネが勧めたところへ通いましょう・・・となります。

そうすると、法人の売り上げがあがり、ケアマネもそこそこのお給料をもらえる。このあとは、良い様にデイサービスやヘルパーの回数を調整するのです。

本人にとっては一時的にはいいかもしれません。でも結局本人が払うお金は1割。その他は保険財源、わたしたちの払ったおかねです。そのしわ寄せは、若い世代への負の遺産です。

自立を妨げ、介護保険財源の無駄遣いをし、結果、保険料を値上げし、こんなんだったら介護保険はいらないです。

 

ついでにいうと、奴隷型ケアマネなんかもっといらない。

 

そういった流れから、少しずつですが、本来のあり方である「公正・中立」を目指すことを目的にケアマネ事業単体で行う、奴隷型でない「独立型のケアマネ」が増えてきました。これは本当に素晴らしいことだと思います。こうなると、営業マンではありません。誰かの奴隷でもありません。しっかりと自分の頭で考え、マネジメントをしようと思っている人たちです。そのかわり、あまり儲かりません。

 

会社に雇用されているけれど、まだ、魂は売ってはいない奴隷予備軍ケアマネも多いでしょう。だが、当然でありながらも、ものすごく残念なことに、ほとんどの介護関係の会社では、売り上げ向上のために、事業所や会社単位で、会議を行っています。ケアマネも参加しています。ケアマネの顧客データーも利用しています。そうやって、何らかの形で会社の利益を優先的にあげることに加担させられています。ストレートに「ヘルパーなどの売り上げをあげるために、ケアマネも協力しろ」という会社もあれば、暗に匂わしながらも、巧くコントロールする会社も多くあります。

そういった当たり前の事情に気がついていないで、聖人気取りの顔したケアマネが、悲しいことに実に多い。こんな自分の姿も見えていないようなケアマネは、どうせ何もできません。

こうして、会社はそこそこ、儲かります。ケアマネもそこそこ、給与を貰えます。公正・中立という偽の看板を掲げながら。結果的に、わたしたちのお金を、奪いながら。

 

2000年に誕生した介護保険。今後も、見直しながら成熟していくでしょう。わたしたちのお金を無駄に使われる前に、なくなる前に、この現実を知ってほしいと思います。

 

続く